「食べること」と聞くと、体に必要な栄養をとることを思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、食事はそれだけではありません。
誰と食べるのか。どんな雰囲気の中で食べるのか。食事の前に、どんな時間を過ごしていたのか。こうしたことが、子どもの「食べたい」という気持ちや、食べる量、さらには食事の楽しさに大きく影響します。皆さんは、友達とご飯に行くときに「栄養を摂取しに行こう」と考えるでしょうか。きっと、一緒に過ごす時間が楽しいから行きたいと思うのではないでしょうか。
子どもにとっても同じです。特に乳幼児期は、「誰とどのように食べるか」が食事の様子に大きく関わります。安心できる人と一緒に、心地よい環境で食べることが、食べる意欲や成長につながっていきます。保育園で働く栄養士は、献立を考えるだけが仕事ではありません。子どもたちが安心して食事を楽しめる環境づくりや、保育士との連携、保護者との相談対応など、子どもの生活全体を支える専門職です。
私自身、保育園の栄養士として19年間、子どもの食に関わってきました。
子どもの食事を作り、食べる姿を毎日見ながら、「献立の良し悪しだけで食べる量が決まっているのではない」と思ったり、「食事の彩りが大切」とは言われているけれど、「黒いひじきも茶色い切り干し大根も子どもたちはよく食べる」と感じたりしました。私は今でも、子どもの食べる姿を観察するのが大好きです。
保育園の栄養士を辞めてから大学の教員になったのは、「子どもが食べること」をもっと研究してみたかったからです。私の研究テーマは、「子どもがどのように食べているのか」「食事の環境がどのように子どもの食べ方や食べる量に影響するのか」といったことです。子どもの研究は奥が深いです。「食卓で子どもは何を見ているのだろう?」、「食事から何を学んでいるのだろう?」など知りたいことが沢山あります。答えは一つではありません。だから面白いのです。
もちろん、食べるもの(栄養価)を整えることは大切です。栄養士は、栄養管理された「良い献立」を立てる必要がありますし、美味しく調理することはとても重要なことです。しかしそれと同じくらい、「子どもが主体的に食べるとはどういうことか」、「保育の中で食事はどのような意味をもつのか」を考えることも重要です。
私は子どもの食を「栄養」だけでなく、「一緒に食べる大人や友達との関係性」「テーブルや椅子の高さ、食具や食器といった食事を取り巻く環境構成」「保育園や家庭における食の‘文化’」といったさまざまな視点から、学生の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。子どもの食べる姿や食べ物に興味のある方は、是非一緒に学びませんか。
文責:小野友紀(家政科 食と栄養コース)
