グルメの原典「美味礼讃」に「会食する人は同じ目的地に赴く旅人の心持ちであるべき」という一節があったと記憶しています。私たちは食卓をともにするのではありませんが、この国文科で優れた文章をともに味わい、時には議論をしながら教員と学生がそれぞれに成長して行きましょう。
「日本文学・文化講義A・B」……1年生の必修科目として、2年生で「卒業論文・創作」を書きこなす総合力を養います。今年の授業では夏目漱石『坊っちゃん』の漱石自筆の原稿を1人2枚担当してもらい、削除した部分や書き直しからわかったことを発表してもらっています。24枚目に「大僧(おおぞう)」という語句が出て来ますが、これが「小僧」の大型版を指すとわかると「漱石さんだって言葉を造るんだ!」とみんな感心しきりです。こんな風に毎回プチ発見があります。
「日本文学の歴史(近・現代)A・B」…既製品の文学史を覚えるのではなくて、多少は不揃いであってもよいから、自分で文学史が語れるようになることを目指しています。先週の授業でこんなことがありました。森鴎外が友人の賀古鶴所(かこつるど)の別荘に飾る「鶴荘」という額を贈ったという手紙を読んでから、鴎外の別荘にもお揃いの「鴎荘」の額があったことを鴎外の子供が書いた文章で示すと「おソロ(お揃いのこと)?」なんてつぶやきが聞こえました。当時48歳になっていた鴎外も粋なことをしていますね。
「卒業論文・創作」いわゆるゼミの授業では、これまで以下のようなテーマで書いてくれたゼミ生がいます。「宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』研究」「森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』研究」「山田かまち研究」「『こころ』における友情」「森鴎外に影響を与えた女性」などなど。いま(卒業年次)しか書けない文章を書くゼミ生の「ひたむきさ」に、教員はいつも励まされるのです。
「浅間山」……高校時代に登ってから、ほぼ毎年眺めに出かけています。現在は登ることが出来ない(活動中のため)「生きている」山であること、時に噴煙を上げるその荒々しさも魅力です。これは群馬県側からの眺めです。
「はやぶさ」……もう引退してしまった寝台特急列車。懐かしいというより、そこに乗って出会ったひとたちが忘れられません。古いからよいのではなく、自然と会話が生まれる「ゆとり」を持った乗り物だから好きなのです。